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「――じゃあ、僕たちはそろそろお店に戻るよ」
溝口さんは席から立ち上がり、三人分の勘定を俺に手渡した。毎日交代でまとめて支払っているらしい。
いったい、一か月の喫茶代はいくらになんだろう。
「また午後に来るからねぇ」
「はい、お待ちしております」
ジジィトリオが店から出ていくとき、さゆりさんはいつも深く頭を下げている。
どれだけ常連で仲が良くても、礼儀を忘れることはない。こういうところがまた人を惹きつけるのだと思う。
ジジィトリオが帰ってようやく二人きりになれると思いきや、すぐに新しいお客さんがやってきた。
「おはようございます」
「おはよう。いつものモーニングセットを頼めるかな?」
「はい、ホットドッグですね」
さゆりさんはまた、メニューにはないモーニングセットを用意する。もうこの店にはメニューなんて必要がないのではと呆れてしまうほど、お客さんにあわせた接客をしてしまう。
でも、呆れる以上に、一人一人の好みに合わせようとする彼女のホスピタリティに感動を覚えていた。
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