秋葉原でヤマノテライン・アンゲロスに出会った

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例えば彼のポエムに以下のようなものがある。 『俺は朝日を見たんだ 公園から朝日を見たんだ それは美しい朝日だった まるで俺を祝福してくれているかのようだった 俺は昨日の夜どうしようもないほど飲み 公園のベンチという名の孤独のベッドに身を包んだが そんな俺にとって贅沢過ぎるほどの朝日だった』 「こんなしょうもねえポエムのおっさんリーマンなんて捨てられて怒るべきだろ!」 「あら、あなたはそう言うけど、本当は何も捨てられない人でしょう?そうでなきゃくだらない小説を書きつづけたりしない」 「うるせえわ!てめえ調子にのってっと脱がすぞ!」 佐々木がそう言うと、ヤマゲロの頭のヘッドフォンの両側からホームドアが出現し、顔をおおった。 「ほら、心をとざすとヘッドフォンのホームドアを閉じるんだよ!で、顔を見せなくなるんだ!ついでに言えば、ヘッドフォンの両側に停止ボタンがついてて、電車止めることができる能力もあるんだよ。でも、俺はこの設定を思いついても、全然面白い展開が浮かばなかったんだ!だから、もういいだろ?俺をほっておいてくれよ」 佐々木はこう懇願するのだ、自ら生み出したキャラに対して。だが、ヤマゲロは自分のペースを崩さない。 「あなたが捨てているのはむしろ恥のほうじゃない?全然練っていない文章を垂れ流すなんて、恥を捨てた人でなければできないもの」 ヤマゲロは輝かしい笑顔で、佐々木にこう言うのだ。その指摘はある程度当たっている。佐々木は、何も考えずに思いついたことばかりネット上にあげてしまいがちだ。まったく虚しい。 「うるせえわ。それももうやめるんだ、俺は。俺は何かを作り出す人になんかなりたくねえんだ!もうほっておけ!」
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