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その日も、何気ない日常だった。漣は街に買い物に行くために父親と共に馬を走らせていた。
「漣、帰りに泉に寄っていこう。」
「ホントに?父さん。また剣術を教えてくれるの?」
木漏れ日の中で漣の顔がパッと明るくなった。泉に行くときは剣の稽古をする。親子2人の約束だ。神山家では、独自の剣術を子供に伝えていくという伝統があり、まさに今漣がそれを父親から教わっている。
2人がたわいもない会話をしていると、街が近づいてきた。周りを森に囲まれた静かな場所に住んでいる漣にとってこの街は、とても賑やかで楽しい場所なのだ。街に入る門の前に馬を繋ぎ、見張りをしている2人の騎士団員の間を通り過ぎると、様々な店が軒を連ねる商店街が見渡せる。そしてその奥には、美しい城がこちらを見下ろすように建っている。
「父さん。今日は何屋にいくの?」
「今日はまずうちの野菜を売りに行くぞ。」
漣の父親は袋に詰めた野菜を見せる。
「分かった。僕も半分持つよ。」
この街は、近隣の国々で採れた様々な作物などが売られ、物流の中心になっている。なので、商品の種類がとても豊富なのだ。神山家はいつもここで買い物をしている。家で採れた野菜を売り、そのお金で必要なものを買った。2人共、両手いっぱいに荷物を抱え、馬を繋いだ場所に戻った。
「さあ、泉に行こうか。」
「うん!楽しみ!剣の稽古頑張るよ。」
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