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「キャー!!やめて!離して!」
その悲鳴を聞いたとき、漣の中で何かが弾けた。ここで動かなければ全てを失うと感じたのだ。薄暗い地下室に置いてあった鉈を手に取り駆け出した。漣の心はさっきまでのパニックが嘘のように研ぎ澄まされ、全てがスローモーションのようにに見えた。
外には、狼のような体をした魔物が5頭いた。そのうちの1頭は1番体が大きく、黒い翼が生えている。その大きな口で母親を咥えている。その下には紅い血を流す父親がいる。
「この野郎!母さんを離せ!」
「漣!逃げなさい!」
漣は1番大きな魔物に飛びかかった。魔物の顔に傷ができた。血飛沫が飛ぶ。
(まだ餓鬼がいたか。)
「っ!喋った…!」
漣が動揺して空中で体制を崩した。その瞬間に魔物の大きな前足が漣を叩き落とした。
「漣!!!」
激しい痛みを感じ、意識が薄れていく。周りにいた魔物達が襲いかかってきた。
(そいつはもう良い。行くぞ。)
母親の悲痛な叫びと共に魔物達が遠ざかって行った。
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