目覚め

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漣が気を失ったまま日が暮れた。冷たい風が漣の体温を奪っていく。魘されて苦しそうにしている漣の声を聞いて、馬達は柵を蹴り壊して馬小屋から出てきた。心配そうに漣とその父親に寄っていく。父親の方はもう既に冷たくなっていて馬達にももう助からないことが分かったのだろう。馬達は漣に寄り添い長い夜を過ごした。漣は何度も魘されて冷や汗をかいた。長い夢を見ているようだった。東の空が少しずつ明るくなってきた頃、馬達は何かの音に反応して立ち上がった。音のする方に体を向け耳をピンと伸ばす。すると、森の茂みの中から馬を連れた女が出てきた。馬達は近づいてくる女を警戒して睨みつける。彼女は目の前の状況に息を飲んだが、すぐに落ち着いて、気が立っている馬達を宥めた。 「大丈夫よ…私は敵じゃないわ…。」 彼女の堂々とした態度を見て馬達は落ち着いた。 「彼はまだ生きてる…?」 馬達は後ろに下がって道を開けた。彼女は漣に近づいて脈を取った。漣の父親の方も見たが、近づくまでもなく死んでいることが分かるような状態だったので、漣の手当に集中した。 「まだ助かる…。」     
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