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私が住んでいる村は、ルカシオという大陸の南部にあるらしい、開拓村だ。
らしい、というのは、これも村のおじじ様に聞いた話だからで、私はこの村から出たことがないからだ。
私はこの村で産まれた。
そしておそらくこの村で一生を過ごす。
そんな生き方は嫌だと村を出ていく者もいるけど、私は嫌じゃない。
この村が好きだからだ。
この村でリクジュと結ばれて、ずっと平穏に暮らしていけたら、どんなに幸せだろう。
幼なじみのことをもう一度考えて、私はまた溜め息をついた。
私はもう十六だ。
周りの娘達は皆、相手が決まっている。
それどころかすでに婚儀を挙げて、子宝を授かっている友人も多い。
私の姉も、十五で嫁ぎ今では三人の子持ちだ。
私だけが、いつまでも独り身のままで、しかも恋人さえもいないのだった。
「だって、リク以外の人なんて考えられないし……でも、リクは何も言ってくれないし」
水瓶に井戸から汲んだ水を注ぎながら呟く。
毎朝の愚痴だ。
何故、リクは何も言ってくれないのかな。
……私のこと、どう思っているのかな。
私は空を見上げた。
目に痛い程の蒼穹が心に染みた。
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