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「外は暑いけど、この中は快適だね」
馬車の中に顔を引っ込めた少年はそう言って、膝の上に乗っているトカゲを撫でた。こくこくと頷きを返してから手に擦り寄ってきたトカゲに、自然と少年の表情も和らぐ。
砂漠地帯の多いリィンスタットは、昼夜の寒暖差が激しく、今のような日中は灼熱の暑さで、夜になると凍えるような寒さが襲ってくる国だ。だがこの幌馬車の中は、気温、湿度共に実に快適な状態が保たれている。これは、偏にこの馬車に置いてある魔術器のお陰であった。黄の国に行くのならばと、金の王が用意してくれたのだ。
どうやら、長旅になる都合上あまり大きな金属器は持っていけないだろうと、王自らがわざわざ新しく作ってくれた小型の魔術器らしい。たった数日でそれを作ってしまうあたり、さすがは錬金術国家の王といったところか。
なんにせよ、その魔術器によってこの馬車内の環境は非常に安定しており、慣れない長旅に挑んでいる少年には大変有難いことだった。
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