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とうとう獣にまで負い目を感じ始めた少年を、侍女が振り返る。そして深々とお辞儀をした彼女は、この扉の先が謁見室であることを告げた。
「あ、ありがとうございます……」
嫌だなぁと思いつつ、開かれた扉を潜る。そんな彼を迎えたのは、あまり馴染みがない内装の部屋だった。
椅子や机がない代わりに、上質な絨毯に覆われた床には沢山のクッションが直接置かれている。そしてその中心には、つい先日出会った国王が座っていた。
「よー、無事に来たな」
軽い口調でそう言った王に対し、少年は深く頭を下げた。
「あの、先日は色々と、ありがとうございました。もうご存知かと思いますが、天ヶ谷鏡哉と申します。ギルディスティアフォンガルド王陛下のご提案で、暫くリィンスタット王国でお世話になることになりました。ご迷惑をお掛けしますが、どうぞよろしくお願い申し上げます」
出来得る限り丁寧にそう言った少年だったが、そんな彼に対して黄の王はひらひらと片手を振った。
「あー、そういう堅苦しいのはいらねぇって。そもそもそんなにお世話するつもりもねーしな」
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