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(モファロンの足で砂を泳ぐ砂蟲に勝てるかどうか判らないけど、他に方法がない……!)
そう思い、トカゲに声を掛けようとした少年は、ふと気づく。
(砂蟲が、襲ってこない……?)
彼らは獲物を見つけたら即襲いかかるという話だった筈だ。だというのに、未だにその場から動こうとしていない。
(もしかして、ティアくん……?)
モファロンの上からじっと砂蟲を見ているトカゲは、見ようによっては相手を睨んでいるようにも思える。ということは、ティアが砂蟲を威嚇しているからこその膠着状態なのではないだろうか。
だが、それも長くは続かなかった。どこか苛立ったように耳障りな叫び声を上げた砂蟲が、モファロンに襲いかかったのだ。巨体に似合わず機敏な動きでこちらに向かって来た魔獣に、少年が息を呑む。それとほとんど同時に、トカゲがぐっと背を反らした。
そして次の瞬間、小さな口をぱかりと開けたティアは、およそその体躯からは想像がつかない大きさと勢いを誇る業火を吐き出した。
「!?」
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