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トカゲの口から吐き出された巨大な火球が、今まさにモファロンを喰らおうとしていた砂蟲に襲い掛かる。そしてその炎の塊が触れた途端、じゅうううという肉が焼ける音と共に、砂蟲が凄まじい悲鳴を上げてのたうった。だが、その状態もそう長くは続かない。
砂蟲の鎧のような肌をも焼く炎は、見る見るうちにその身体を蝕み、そしてついには、全てを灰燼となしてしまったのだ。
文字通り跡形もなく燃え尽きてしまったそれを見た少年は、ぽかんと口を開けて呆然とするしかなかった。炎獄蜥蜴がすごい生き物だという話は聞いていたが、まさかここまですごいとは思っていなかったのだ。
一方のトカゲはというと、風に舞う灰を一瞥してから、もう一度だけ小さく火を吐いた。口に留まっていた残り火を吐き出すような、そんな印象を受ける動作だった。それからモファロンを数度叩いた彼は、するすると少年が顔を出している窓へとやってきた。そんなトカゲを見て、少年がようやく思い出したように声を出す。
「……あ、ありがとう。……ティアくんって、とっても強いんだね……」
その言葉に、トカゲは得意げに胸を張ってふんすと鼻息を出した。どうやら褒められたのが嬉しかったらしい。それから、いつまで経っても窓から顔を引っ込めようとしない少年を見て、こてんと首を傾げる。
「……ああ、うん……」
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