カフェ

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 その時、私の手元の携帯が短くブッ、ブッと鳴った。 真っ黒な画面にメッセージの新着のお知らせが表示された。 職場の同僚の名前が書かれている。 思わず、指でポンッと画面を押した。 メッセージのお知らせ表示は消え、その代わりロック画面に切り替わった。 黒い画面からライトアップされた東京タワーの写真がでてきた。 私は慌てて携帯を裏返しにして画面を隠した。顔を上げると愛子が裏返しにされた携帯をみつめていた。 「東京タワー?」 「えっ、うん……」 「前の犬の写真可愛かったのに変えちゃったんだ。珍しいね?今どき」 言いながら、愛子は目線を上げて私の目を真っすぐにみつめた。私は、頭で考える間もなく、言葉が口からついて出た。 「あっ、仕事帰りにたまたま近くを通ったから。小学生ぶりにこんな間近でみたよ」 「ふーん」  愛子は少し硬い表情をしていたが、コロッといつも通りの愛らしい表情に変わって 「スカイツリー出来てからあっちしか行かないもんね。でも、ほんとに加奈はいい子すぎるから恋人出来にくいんだよ。多少強引にでも好きな人にはガンガンアタックしないと」 愛子が言った。 私は、そうだねと呟いた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加