カフェ

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彼女は知らない。 私が彼女が知っている高校時代の私とは、もう違うのだということを。 ……いい子なんかじゃない。ウサギの皮をかぶっていい顔しているだけなんだ。 私には愛子には絶対に言えない秘密がある。   きっかけはたわいもない偶然からだった。 大学二年生の秋だった。 サークルの飲み会をしていた居酒屋の襖に隔てられた隣の部屋に、別の飲み会をしている中井章大がいたのだ。トイレへ向かう廊下でお互いの姿に気づいた。 会うのは高校卒業以来初めてだった。 けれど、愛子と付き合っていたときは愛子がSNSにあげる写真で顔は何度も見ていたし、話もたまに聞いていたから彼のことはすぐにわかった。    その頃はすでに愛子と章大が別れてから一年以上経っていて、二人とも何のためらいもなく、お互いの飲み会をこっそり抜け出して、二人で違うお店に飲みにいった。 久しぶりに会った彼は、髪を染めて少し前より大人っぽくなっていて、でも笑うたびにほっぺに出来るえくぼは昔のままだった。 高校の文化祭で会ってから愛子と章大と、彼の友人と何度か遊んだこともあったから、久しぶりに会うと懐かしさがこみあげてくる。 その夜は昔話で盛り上がったけれど、二人とも二軒目ということもあって一時間くらいでお開きになった。 それから何度か二人で出かけることが何度かあった。 デートなんてたいそうなものじゃなくて、ただの気の合う男友達という感覚だった。 不思議なもので、高校生のときより今の方が彼と話が弾んだ。
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