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「でも…本当に、いいんですかね…」
「ん?なにネガティブなこと言ってるの」
「所長は…その…良心は、うずかないのですか。私は、やはり…まだ捨てられないです…良心は…」
「何を言っているのかな、君は。これは、良心の領域じゃない、良識の領分なのだ。国家的に正しい政策なのだよ。科学の進歩の上でも、輝くべき犠牲なのだ」
「所長、そろそろ第8便の出発時刻です。秒読み開始します。2分前…」
「そもそも棄民なんて、いつの時代でも、どこの国でもやっていることだから…」
「…1分前…」
「私は良心に一片の曇りもない」
「10、9、8…」
「所長!SG06334って、官房長官のお嬢さんじゃないですか?」
「何?」
「7、6、5…」
「所長!!NK06461は、所長の息子さんでは?」
「え?いや、ウソだ。そんなバカな!」
「4、3、2…」
「所長!官房長官からお電話です!」
「待て!出発を待ってくれ!」
「1、0…」
「ああ、あああああ…」
「内閣府『火星移住プロジェクト』極秘№34第8便発射しました」
「あああ、待ってくれ…待って…」
―さらば、地球よ…
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