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「あれえ?福山君、ゴミ捨てておいてって言ったのに、まだ捨ててないの?」
あ、津田さんだ!俺の憧れの人…。総務課のマドンナ、津田香織…やっぱり、俺のことを気遣って、見に来てくれたんだ…
「あ、すみません。僕、まだ自分のゴミがあるんで、それと一緒に、と思って…」
「そっか、あと二日だものね、福山君がここにいるの…。」
そうです…俺は栄転…っていうか、選ばれて、あさって、旅立つのです。
「津田さんには、僕、ホントにお世話になって…」
「何言ってるの。私は何もしてないわよ。ただ、この会社に長くいるしね。自分なりに、若い人のためになれば、とは思ってるけど…」
いやいや、津田さんの愛情は、俺、目いっぱい感じてましたよ。俺は知ってるんですよ。津田さん…いや、香織さんが、俺のこと、はじめっから気にしてたこと…でも、年の差があるからさ、新人の俺に、わざと厳しく接してたでしょ。
「俺、いや、僕、あの付箋、今でも大事に持ってるんっスよ」
「え?あのって、どの付箋?」
またまた~、知らないふりしてぇ。
「あれですよ、あの入社三日目にお茶に誘ってくれたメモ…」
「え?私、福山君とお茶したことないけど…」
「ええ?ホントに覚えてないんっスかぁ?俺が課長にパワハラされてたら、缶コーヒーおごってくれたじゃないですかぁ」
「あ、ああ、あれね…。いや、あれ、君が香川商事さんからの電話を担当の澤井さんに取り次がないで黙ってたから、危うく取引がキャンセルされそうになった…」
「僕、電話苦手なんっスよ。今どき、電話なんか誰もしないじゃないですか。なんで、会社はLINEじゃないのかな」
「いや、電話は大事な仕事で…」
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