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「…………ごめんなさい」
「そいつの為に、生きたいのか。アゲハ」
「…………ごめん、なさい。
私は、生きたいの」
「ジャア、行ッチマエ」
モルフォ蝶が、笑った。
夢から、醒める。
「アゲハ…アゲハ…。
お願い…どうか戻って来て…。
目を開けて…………アゲハ…………!」
病院のベッド。
聞こえる。
心拍を計る機械の音。
そして、あの子の声。
黒い瞳をした、向日葵の様に笑う、あの子の声だ。
目を開ける。
泣いている。
大粒の涙を零しながら。
私の手を、ぎゅっと、ぎゅーっと強く、握りながら。
…泣かないで。
貴方に泣き顔は、似合わないよ。
私は、カナタの涙を、上手く動かせない手で拭う。
カナタの呼吸が、一瞬、止まった様に思えた。
そうして、カナタはまた泣き出す。
泣かないで。
泣かないで。
「……………………泣か……ない、で…………カナタ……」
「…………泣かない訳ないでしょこの馬鹿アゲハーーーーッ!」
カナタは、私をぎゅーっと抱きしめた。
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