アゲハ蝶の見た夢

10/11

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「…………ごめんなさい」 「そいつの為に、生きたいのか。アゲハ」 「…………ごめん、なさい。  私は、生きたいの」 「ジャア、行ッチマエ」  モルフォ蝶が、笑った。  夢から、醒める。 「アゲハ…アゲハ…。  お願い…どうか戻って来て…。  目を開けて…………アゲハ…………!」  病院のベッド。  聞こえる。  心拍を計る機械の音。  そして、あの子の声。  黒い瞳をした、向日葵の様に笑う、あの子の声だ。  目を開ける。  泣いている。  大粒の涙を零しながら。  私の手を、ぎゅっと、ぎゅーっと強く、握りながら。  …泣かないで。  貴方に泣き顔は、似合わないよ。  私は、カナタの涙を、上手く動かせない手で拭う。  カナタの呼吸が、一瞬、止まった様に思えた。  そうして、カナタはまた泣き出す。  泣かないで。  泣かないで。 「……………………泣か……ない、で…………カナタ……」 「…………泣かない訳ないでしょこの馬鹿アゲハーーーーッ!」  カナタは、私をぎゅーっと抱きしめた。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加