アゲハ蝶の見た夢

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 その声も、やがて聞こえなくなって。  …ほんの僅かな、時が流れ。  私の手首を掴んでいた闇は、跡形も無く食い尽くされた。 「サァ、行コウ。  終ワリハ、モウ、スグソコダヨ」  私は、望まれて生まれました。  フラスコの中で、遺伝子を書き換えられ、  生まれたのは、祝福を受けられなかった、  醜い醜い、肉塊。  それが、私でした。  私は、望まれて生まれました。  だから、望まれた理由を果たす為に、頑張りました。  頑張りました。頑張りました。頑張りました。  他の私より、優れた私である為に。  悪魔に魂を売ってでも、私である為に。  私は、望まれて生まれました。  沢山の私が、死にました。  沢山の私が、死にました。  たった一人の親友だった私が、死にました。  …沢山の私と、親友だった私は、今も、お墓の下で眠っています。  私は、望まれて生まれました。  それなのに、私は、初めて、望まれていない事をしました。  私の写真を褒めてくれた人がいました。  …あの子は、今、どうしているのでしょうか?  私をぎゅと抱きしめてくれた、黒い瞳をした、向日葵の様に笑う、あの子は。  私は、望まれて生まれました。  貴方は、望まれて生まれました。     
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