アゲハ蝶の見た夢

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 私と貴方は、違う道を生きると決めました。  傷付き、苦しみ、呻く貴方を見捨てて。  …そう。私は確かに、貴方を捨てて、生きると決めたのです。    最期に辿り着いたのは、一片の汚れも無い、真っ白な部屋。  真っ黒な扉があるだけの、最期に相応しい部屋。  ドアノブに、モルフォ蝶が止まる。  扉を開けと、言わんばかりに。  …これで、終わり。  全部全部、終わり。  ようやく。  ようやく。  …………。 「ドウシタノ?」  …痛い。  痛い。痛い。  とても痛いの。  苦しいの。悲しいの。  どくんどくんどくんどくん。  心臓の音が煩い。  鼓動。  心臓の脈動。  どくんどくんどくんどくん。  どくんどくんどくんどくん。  二つの心音。  熱い。  手が熱い。  人の体温。  私の体温じゃない。  これは。  これは。  これは。  嫌。  嫌嫌嫌嫌。  嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌。  嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌! 「死にたく…………ない…………………!」  闇が、私を喰う。  白から、黒。  真っ暗闇。  扉が、無い。 「死ニタガッテイタ癖ニ」  モルフォ蝶が言う。 「死ニタガッテイタ癖ニ」  モルフォ蝶が言う。 「死ニタガッテイタ癖ニ」  モルフォ蝶が言う。     
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