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第2章
大学に入学して親元を離れ、一人暮らしが始まった。
あんなに厳しかった父さんも大学に入学してからは「猛、これからは自分の思うように生きなさい」と言って僕を見送った。
今まではいい大学に入るために勉学に専念するように厳しく躾けられたのに急に放任するようになったのはどういう心境の変化だろうか?
父さんにとって教育とは子供を大学に入れることまでだったのか、あるいはもうここまでくれば子供の自主性に任せても問題ないと考えたのだろうか?
僕は今まで親の言う通り勉強しかしてこなかった。友達もいないし、趣味もない。ひたすら目の前のテストの問題を解くことだけが人生だったといっても過言ではない。
これからもきっと同じことを繰り返すだけの人生だろう。
僕は親の望む通りに生きることしか許されていないのだから。
大学の近くに借りたこのワンルームマンションに引っ越してから一週間ほどになるが、部屋は備え付けのベッドとテーブルしかなかった。
実家の自室は天井まで届く本棚に囲まれ、参考書で埋め尽くされていたけれど、もう必要なくなったのですべて置いてきた。食事はコンビニ弁当ばかり。勉強をしなくてよいとなると何をしていいのかわからない。
唯一昔から大事にしていたお守りを取り出して、テーブルの上にそっと置いた。どんなときもこれさえあれば耐えることができた。
日が沈むにつれて部屋は次第に暗くなっていった。僕は部屋の明かりもつけず、床に腰を下ろして、ただ時間が経つのを待つ。いつまで続くのだろうか?
日が昇り目が覚めた。
クロゼットを開け、適当にシャツとスラックスと取り出し着替えた。
どれも母さんが買ってきたもので自分で選んだものはひとつもない。シャツは少しきつく、スラックスは裾が短かかった。
鏡を見ると髪が大分伸びていることに気がついた。自分の顔を久しぶりに見た気がした。
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