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私たちは森で道に迷いこの城にたどり着きました。一晩だけでいいから泊めてほしいと頼む私たちを城の主は快く迎え入れてくれました。……しかし、この城に住んでいたのは悪い魔法使いだったのです。私と彼の二人は城の地下牢に閉じ込められてしまいました。
私たちは言いました。なんでもしますから、どうか命だけは助けて下さいと。すると、魔法使いは私にこう言いました。お前は私の妻になれ。そうしたらその男の命は助けてやる、と。
私は魔法使いの妻になることを選びました。魔法使いに言われるままに誓いの呪文を唱えると、私の額に紋章が浮かび上がりました。
これで彼だけは助けることができると私が安堵した次の瞬間、魔法使いは彼を殺しました。魔法使いは、生きているといつ仕返しをしに来るかわからないからな、とそう言いながら笑っていました。私は魔法使いに騙されたのです。
魔法使いは言いました。逃げようとしても無駄だ。誓いの呪文によりお前は私の城から出ることはできない。これでお前は一生私のものだ。
このまま私は一生この城から出ることはできないのでしょうか。何よりも、彼のいない世界に生きていたってしょうがない……そう思った私は魔法使いを殺して自分も死のうと思いました。
真夜中、私はこっそりベッドを抜け出しました。それからキッチンに向かい、銀のナイフを持ち出したのです。彼を失ってからというもの、すっかり私は憔悴しきっていたので油断していたのでしょう。魔法使いはぐっすりと眠っていました。ああ神様どうかお許し下さい。私は目を瞑り十字を切りました。それから、魔法使いの心臓めがけてナイフを突き立てたのです。
魔法使いはカッと目を見開くと、自分の胸に刺さったナイフを見ました。そして、私にこう言ったのです。貴様よくもこんなことをしてくれたな。お前には死ぬまでとけない呪いをかけてやる。
そう言い残して魔法使いは死にました。魔法で他人の傷は癒せても、自分の傷を癒すことはできなかったようです。
魔法使いを殺した後、私は死のうとしました。けれど、私は死ねなかったのです。
首を吊ろうとしても固く結んだロープはするするとほどけてしまい、手首を切ろうとしてもナイフは弾かれ手首に刃を当てることすらできません。
呪いによって、私は自ら死ぬことができなくなってしまったのです。
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