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それからしばらくして、彼に再会したのは全くもって偶然だった。
彼は少し背も伸びて、けれど昔と変わらない笑顔で私に声をかけた。私たちはあの時と同じように自然とお互いのことを話し合っていた。
少しして彼は急に改まったようすで言葉を切った。彼の顔は恥ずかしそうに赤みがかっていた。
「あのさ・・・」
彼が背負っていたカバンには、今もあのキーホルダーがぶら下がっていた。あの日私が捨てたものを、今でも彼は大事にしていたのだ。
土産物店で熊のキーホルダーを渡した―きっとそれと同じ目が、私のことを見つめていた。
別れ際、彼は自分のカバンからキーホルダーを外して私に差し出した。あの日、一度は捨てたものだけど、再び手に取ることをこの子は許してくれるだろうか。
もう二度と手放したりはしないから―くたびれた熊のキーホルダーをこの手にそっと握りしめた。
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