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否、今まで何度か聞かれた事はあったのだが、全て適当にはぐらかしていたのだ。
何故そこまで親の事を話したがらないのか?
答えは簡単、親が居ないから。
私は、あの時親を捨てたんだ。
「ああ・・・えっと、典型的な母親って感じ。優しいけど、怒ると怖い。ごく普通の・・・母親。うーん、でもちょっと変態染みてるかな?」
ああ、これは嘘だ。
血が繋がっている実の母親の記憶と、私が「あそこ」に所属してから母親代わりとなってくれた人の性格を掛け合わせた、ただの虚像。
「へ、変態染みてるんだ・・・」
「うん、まあ・・・ちょっと、ね。ほんとちょっとだけ。」
さて、これ以上追及されても困るしそろそろ部室に戻るとしよう。
楽器ケースを閉じ、持って立ち上がる。
「この後先輩と話さないといけない事があるから、そろそろ失礼するね。」
「うん!また乃愛ちゃんのお母さんの話聞かせてね!」
「機会があればね。」
──そうだ、今日は頼まれている事があるから楽器を持って帰らなければならない。
仕方がない、少々面倒だが先生に許可を取らないと。
まあ、あの人の事だし快く承諾してくれるだろう・・・
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