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オマエが世界を救え
火の海になった世界。
そしてロボットになった僕。
傍らにはなぜか、どや顔の父がいる。
「父さん? 何、これ?」
ウイーン、ガシャンと僕は尋ねる。
「寝ている間に改造しておいた」
「いや、意味がわからない」
「すまん。お前にはしがない研究職とだけ言っていたが、実は私は国家の極秘任務で戦闘型ロボットを開発しているスーパー研究職なのだ」
「……いや、そうじゃなくて、つうか、そうだとしても、……なんで僕がロボットにされてんの?」
「え? だって世界の危機じゃん」
サラッと父は言った。
そういや、この父親。食事中にオナラしても「え? 生理現象だから仕方ないじゃん」って言って、いつも謝らないんだったっけな。
「大丈夫。ちょっと友達と遊べなくなったり、彼女できなかったりするだけだ」
「おいッ」
ジャキンと叫んだが、父はとくに気にする様子もない。
このマイペースに何度母さんがキレたことか。
「あと就職とか結婚とか、……でも、世界を救うことに比べれば、些末なことだ。……さぁ、オマエが世界を救えッ」
父は堂々と告げた。
なんたろう。
このCPUがオーバーヒートしそうな感覚は……。
ウイーン、ガシャン。
僕はマシンガンを父に向けた。
「なんでだッ、息子よッ。敵はエイリアンだぞ~ッ」
「エネルギー充填120%ッ」
「目を覚ませッ、息子よッ。エイリアンを倒せば、オマエは世界の英雄になれるんだぞッ」
「……英雄……」
父に言われて、ピコピコっと僕は手を止めて考える。
「世界を救った英雄と、父を殺した犯罪者と、どっちがいいか、よく考えるんだッ」
「……目が覚めたよ。父さん……」
「息子よッ」
「父さんッ」
「息子よッ」
「父さんッ」
「息子よッ」
「覚悟ッ」
「って、結局かいッ」
そんなこんなで、目覚めたらそこには、僕が世界を救う物語があったのだが、それはまた別の話。
「だから、目を覚ませってばッ、息子ッ」
「うっさいッ。聞くセンサー持たんッ」
そう。こいつに引導を渡すためなら目などシャットダウンしたままで構わないのだ、僕ッ。
「覚悟しろッ。クソ親父ッ」
「それがここまで育ててもらった父に対する態度かッ。もう父さん怒った。父さんも変身してやるッ」
(了)
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