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始まりの場所で
そいつは随分と戦場には似つかわしくない澄んだ目をした坊主だった。
奴は瞳に溜め込んだ涙を落とさないよう必死に堪えながらその目と同じように真っ直ぐ銃口を俺に向けた。
なんともまぁありふれた話だ。結局、みんな同じところにたどり着いた訳だ。
全て全ては無駄の無駄。みんな気づかずグルグル回る。俺たちは自分の尻尾を追いかける犬だ。
そいつは咎めるような口調で俺に返せと言った。
随分と懐かしい台詞だ。随分と聞き慣れた言葉だ。
足も震えて肩もグラついて、そのくせして銃口は依然としてブレない。
やっぱりだ。こいつも俺もあいつも結局ここに行き着いちまう。
前へ前へ進もうと足掻いてもそもそも道は先になんて続いちゃいない。
その引き金は引いたら最後、ウロボロスに飲み込まれて気づけば弾丸は自分の頭のすぐ横だ。
あの日、アイツは銃を抜かなかった。静かに近づいてきたアイツに放たれた一発の鉛はあっさりと胸を抜けてどっかに飛んでった。
そうやってでしか俺たちは輪から抜け出す方法を知らないからな。
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