純喫茶「タバコ」

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 和子はタバコ屋を乗っ取り喫茶店を開いていたことを白状した。すると母はとっくに知っていたと応えた。看板に貼り付けた『純喫茶』のシールを剥がし忘れていたからだった。  そして和子はこれからはたまにタバコ屋を手伝っても良いか、と聞いてみた。 「結婚して諦めてたけど、やっぱり喫茶店やりたいもん。夢だったし」  照れくさかったので、本当の目的は言わなかった。 「それは手伝いとは言わないよ。また乗っ取ろうとしてるだけじゃないかい?」  確かに喫茶店を開くのは夢だった。しかしそのきっかけとなったのは、ひとえに母の笑顔である。 「大丈夫よ。今度は喫茶店にしちゃったりしないから。ね、いいでしょ?」  和子が子供っぽくおねだりをすると、母は 「しょうがないねえ」 と言って再び笑うのだった。
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