さよなら”デス・フレイム・ナイツ”

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「デス・フレイム・ナイツはいるもん!」  クラスにどっと笑い声が起こる。笑われていたのは瀬戸直紀だ。 「こいつ頭おかしいんじゃねえの」 「助けてえ。ですふれいむないつ!」 「瀬戸くん、変身だ!」 悪乗りした男子たちが気色悪い声を出す。女子がそれを甲高い声で笑う。 「違う! デス・フレイム・ナイツは敵で」 よせばいいのに直紀は設定を言おうとする。 「瀬戸がいるのはエターナル・フレイム・ナイツ。変身じゃなくて封印を解いて戦う」 「はあ?」 突如話に加わった千草をクラス中がぽかんと見ていた。 「そうだよね。あたし知ってる」 「うん!」 直樹と千草はそれからすぐ仲良くなった。ふたりともあれからクラスの子達に相手にされなくなったけれど、ふたりとも”デス・フレイム・ナイツ”と”エターナル・フレイム・ナイツ”に夢中になっていたからそんなことはお構いなしだった。”デス・フレイム・ナイツ”と”エターナル・フレイム・ナイツ”の設定を直紀が考え、それを千草が話にする。もちろん、その設定はどこかの真似の寄せ集めだし、話だってワンパターンだったけれど、でもふたりはそれで満足だった。直紀はどうして”デス・フレイム・ナイツ”を知っているかを千草に聞かなかったし、千草も”デス・フレイム・ナイツ”が一体どこから出てきたのか聞かなかった。そんなことはどうでもよかったのだ。ふたりの蜜月は中学二年生まで続いた。蜜月が終わったのは中二のクラス替えの時だった。クラスがバラバラになっても千草は変わらなかったが、直紀は違った。 「デス・フレイム・ナイツとか馬鹿じゃねえの。いつまでやってんだよ。気持ち悪い」 一体何があったのか直紀はあっさりと”デス・フレイム・ナイツ”も”エターナル・フレイム・ナイツ”も捨てた。千草はノートを抱えたまま黙って直紀のクラスをあとにした。
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