さよなら”デス・フレイム・ナイツ”

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「随分、有名になったじゃんか」  千草の前には十年前の”盟友”がいた。”デス・フレイム・ナイツ”打倒を目指した”エターナル・フレイム・ナイツ”の盟友が。 「久しぶり。直紀」 千草は力無く言った。千草がライトノベル作家としてデビューして一年経っていた。デビュー作は主人公は”エターナル・フレイム・ナイツ”入団を目指す少年だ。あの名前をそのまま使ったのは直紀へのメッセージのつもりだった。まだ”エターナル・フレイム・ナイツ”がいるという。千草はまだ”エターナル・フレイム・ナイツ”の一員なのだ。果たして直紀は千草の元を訪れた。だが、千草の想像とはだいぶ違っていた。 「びっくりしたぜ。懐かしいな”エターナル・フレイム・ナイツ”だっけか。俺が考えた」 「そう」 直紀の目は荒んでいた。 「でもあれは俺が考えたんだよな」 にたにた笑う直紀はかつてデス・フレイム・ナイツがいるとほとんど泣きながらも断言していた少年から想像もつかない顔だった。 「だったら何割かもらって当然じゃね?」  捨てるとはこういうことか。あの日、直紀が”エターナル・フレイム・ナイツ”を捨てた日、直紀に何があったのかはわからない。タチの悪い誰かにからかわれたのかそれとも”エターナル・フレイム・ナイツ”そのものに興味がなくなったのか。いずれにしても直紀は”デス・フレイム・ナイツ”も”エターナル・フレイム・ナイツ”も捨てた。捨てたら最後、もうその力は失われる。二度と復活しない。無理に呼び起こしたところでこんな結末になってしまうのか。会いたかったかつての盟友。きっと訳あって一時的に夢の国を捨てただけだと思っていた。世界を狂わせる”デス・フレイム・ナイツ”討伐のために”エターナル・フレイム・ナイツ”として戦う夢の国。一時的でも捨てたら最後、崩れ落ちてしまうことを千草は知らなかった。ずっと捨てずにいたから。 「そうだな。とりあえず三割……」 これはバツなのかもしれないと千草は思う。一度捨てた物を無理に拾わせようとしたバツ。 「長い付き合いになりそうだな。盟友……何か言ったか」 さよなら”エターナル・フレイム・ナイツ” さよなら”デス・フレイム・ナイツ” 捨てたものは捨てたもの。 千草はスマートフォンを取り出すと、担当編集者に電話をかけた。現状を伝えるために。
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