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 中学生になった。 「おい! なんなんだこの点数は! どの教科も一桁じゃないか!」 「…………」 「黙ってないで何とか言ったらどうなんだ!」  父親が怒鳴っている。僕の学校での定期テストの結果が不服だったらしい。 「ちょっとこのノート! こんなの読めるの? もっと綺麗に書きなさい!」 「僕は読めるよ、自分で書いたんだし」 「口答えしないの!」  母親が怒っている。僕の書いた字が汚いのだそうだ。 「「昔はできる子だと思っていたのに何かの間違いだった! お前なんてうちの子じゃない!」」  スポーツテストの結果も悪く不器用で友達もろくにできず、なんでもすぐに諦めてしまうような僕はどうやらお呼びではないらしい。長所は似てる似てると言っていたくせに、短所は一切自分たちに似てると言わない両親。都合のいい人たちだ。  高校を卒業するまで両親の皮肉や罵倒の声、周りに見下されることにも耐え続け社会人になって親に捨てられるように一人暮らしをすることになった。 「お前をうちの子だと思いたくないからとっとと出ていって自分の力で生きていけ」だそうだ。  ついにやっと解放された。僕はこの瞬間がたまらなく嬉しかった。 「ここからが俺の人生の始まりだ」  一人暮らしを始めるアパートの一室で一人声に出して呟いた。
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