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ある日、河原で一人ぼーっと座っていると後ろから声をかけられた。
「あの……」
後ろを振り返る。
「おお! やっぱり息子じゃないか! 久しぶりだなあ!」
「…………」
そこにいたのは父親だった。高校を卒業した俺を捨てたあの……。
「ちょっと見ない間にずいぶんとすごい人になったみたいじゃないか。さすが我が息子、父さんは鼻が高いぞー!」
「…………」
目の前に立っている男が勝手に喜んでいる。
「どうした、俺を忘れたのか? お前の父親じゃないか。たまには顔くらい見せに来たらどうなんだ?」
数十年ぶりの嫌悪感や怒りなどが溢れてきた。このままこの男に話しかけられていたらどうにかなってしまいそうだ。俺はできるだけ感情を抑えて静かにこう言った。
「人違いです。自分はこれから予定があるので、せっかく声をかけていただいたのにすみませんが失礼します」
俺に話しかけていたクソ男は唖然としていたが、はやく離れたい一心でその場を立ち去った。
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