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いつだったか、ジュースの中に毒を入れて、自販機に放置しておくと言う事件があった。気づかずに飲んだ人の中から何人か死人が出た、と親に聞かされたことがある。だから、不用意に置いてあるものを食べるんじゃないぞ、と。
「まさか」と先輩は言い、続けた。
「でも、そう言われたらさすがに食うわけにもいかないか。もったいないけど、捨てるよ。」
先輩はポップコーンの箱を持ち上げ、ゴミ箱に向かった。
「もし、毒が入ってないのを証明できれば、喜んで食べちゃうんだけどね」
「ありますよ、毒が入ってるか一発で分かる方法」
先輩の動きが止まる。私は続けた。
「簡単な話です。一口食べてみればいいんですよ。毒が入っていれば、先輩が死んで、晴れて証明終了です。」
「こらこら」
先輩は再びゴミ箱へ向かう。私は「ちょっと待って!」と先輩を止めた。
「先輩、このまま捨てるのも面白くないと思いませんか」
先輩はあきれた顔で私を見ている。私は続けた。
「このポップコーンに毒が入っているかどうか、推理しましょうよ。もし、どっちかが毒が入っていないことを証明できれば、晴れてポップコーンを食べることが出来ます。制限時間はこの部屋の掃除が終わるまで。それまでに解けなければ、潔くポップコーンは捨てましょう。名付けて『毒入りポップコーン事件』。どうです、面白そうじゃないですか」
普通に考えて、毒が入っている危険性は薄いだろう。しかし、わざわざ買ったポップコーンを手つかずで放置しておくには、何か理由がありそうなものだ。それを知りたいという、単純な知的好奇心もあった。
先輩は少し考えたけれど、面白そうじゃないですかと言う言葉に惹かれたらしい。
「その勝負、乗った」
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