窓際に写る少年

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窓際に写る少年

 寝入りばな、ガクンと落下する感覚を受け、田谷宏昭は、ハッと目が覚めた。  床へつき、眠りに入ろうとした矢先の出来事だった。おそらくジャーキングを起こしたのだろう。  ダブルベッドの上で、深呼吸を行い、首だけを隣に向ける。  豆電球の薄暗い中、妻の杏奈が微かな寝息を立てつつ、眠りについている姿が目に入った。起きた様子はない。  体を起こし、床を覗き込む。フローリングに敷かれた布団の上で、ぬいぐるみを抱いた娘の穂香が眠っていた。穂香は捻ったようなおかしな体勢になっていた。寝相が悪いのだ。  宏昭は妻を起こさないよう注意しながら、ベッドから下り、穂香の姿勢をそっと正す。穂香は起きることなく、静かに寝入ったままだった。  宏昭はベッドへ戻り、仰向けになる。  眠気が綺麗さっぱり消え去っていた。体は程よく疲れているのだが、頭が変に冴えている感じだ。先ほどのジャーキングも、そのせいで起きた現象だろう。  寝室の染み一つない綺麗な天井を見つめ、原因を考える。それは、はっきりとわかっていた。     
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