窓際に写る少年

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 ここの土地は新興の住宅地だ。利便性が良く、人気も高い。運良く抽選により、購入できた時は、杏奈は非常に喜んだ。しかし、宏昭の心は浮かなかった。ここの土地を始めに見た時、言い知れぬ違和感を覚えたのだ。  何か憑いているのだろうか? 曰くつきのものが。  自分はそんな非現実な絵空事は信じていないが、この感覚を表現すると、その類になってしまう。  宏昭は、目を閉じたまま、その感覚の根源を探っていたが、掴むことができない。頭の中の思考が、渦を巻いたように迷走し、やがていつしか眠りについていた。  「ねえ、ここに写っているものって、もしかして幽霊?」  翌朝、宏昭はリビングで妻にそんな質問を受けた。  今日は引越しのため、会社から有給を貰っている。休みではあるが、家中の至る所に積み上がったダンボールを、これから開封していかなければならないのだ。うんざりする。  「幽霊?」  宏昭は、ソファに座っている杏奈に聞き返す。部屋の隅で、玩具で遊んでいる穂香の様子をチラリと伺う。  杏奈は、手にスマートフォン持っていた。  「昨日の写真」  杏奈は、立ち上がり、スマートフォンの画面をこちらに向けた。  画面に写っていたのは、この家を背景に、家族三人が揃って立っている写真だ。夕日に染まっている。  昨日、荷物を全て運び入れた後、引越し業者の一人に頼んで、記念にスマートフォンで撮影したものだ。  「どこに幽霊が?」     
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