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「あー、やっぱり信じてない」
「当たり前だろ。そんなものいるわけがない。それより、早く片付けようぜ。遅くなると、日が暮れる」
宏昭は、杏奈の側から離れようとした。すると、杏奈は妙なことを口走る。
「だけど、この子、どこかで見たことがある気がするのよね。思い出せないけど」
宏昭は、再度、写真の中の少年を覗き見た。
言われてみれば、宏昭も何だかそんな気がする。以前どこかで見たことがあるような、あるいは、誰かに似ているような。芸能人に似ている人物と出会ったものの、その芸能人の名前と顔が思い浮かばない感覚に似ていた。
宏昭が首を捻っていると、玩具で遊んでいた穂香が、駆け寄ってきた。
「パパー遊んで」
宏昭は穂香を抱き上げ、微笑みかける。
「これからお片づけだ。それが終わってから遊ぼうな」
穂香は、不満そうに膨れっ面をした。それが可愛く、笑ってしまう。つられて杏奈も笑った。
昼を過ぎた頃には、一階のダンボールをほとんど片付け終えた。残りは二階の分だ。このペースなら、日が落ちる前に終わらせることができるだろう。
宏昭は、荷物を両手に抱えたまま、階段を登る。
上がりきった所で、ふと今朝の話を思い出した。
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