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そう言えば、あの写真の少年が立っていたのは、この場所だった。
宏昭は、窓際の手前の床に目を落とす。そこには、埃一つ落ちておらず、人が立っていたという痕跡は見当たらなかった。もっとも、杏奈が言う通り、幽霊なら、そもそも足跡すら発生しないだろうが。
宏昭は、窓から外を覗く。陽光に照らされた住宅街が見て取れる。真下が玄関になっており、そこから伸びるアプローチ部分で、昨日家族三人が揃って写真を撮ったのだ。
あの写真の少年は、ここでこうして自分達を見つめていた。それはなぜだ? 侵入を知られたくないから、こちらの様子を伺っていたのか。そもそも、どうやって入ったのだろう。鍵はほとんど閉まっていたはずなのに。
宏昭は、もう一度、足元の床を調べてみた。無理に侵入したのなら、土足のはずだ。だが、そんな痕跡はない。つまり、写真の少年は、靴を脱いで上がってきたのだ。わざわざ。
宏昭は、今回の件で、どこか妙な違和感を覚え始めた。何かおかしい気がする。
階段の方から足音がした。顔を向けると、杏奈が階段を登ってきていた。怪訝な表情だ。
「何してるの。早くしないと日が暮れると言ったのは、あなたよ」
「わかっているよ」
何か心に引っ掛かっているが、ともかく、今は片づけが優先だ。
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