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「私も一人前になれば、外へ出れるの? 消えない?」
私は答えない。主人の知らないところで勝手なことを教えることは出来ない。
考えるホムンクルスというものは厄介だ。決まりで雁字搦めにしないと何を仕出かすかわからない。
「ゲイリー」
主人が大魔法使いの集まりから帰ってきた。
「あっ、おかえりなさい」
主人は7746を無視する。よく喋るが、自分を称賛しないそれに嫌気が差しているようだった。
私の首根っこを掴んで主人は人形部屋から出ていく。昔はあんなに入り浸っていたのに、今はもう潰してしまおうかと愚痴るほどだ。
でも、あの人形部屋を潰すことは主人のプライドが許さない。潰せば、今までの研究が無駄になる。
7746がいては思ったように事が運べない。
「ご主人」
屋根の上で頭を抱える主人に私は「一つ、許可して欲しいことが……」とある提案をした。
「蜥蜴の尻尾組7746番」
私がそう呼ぶと、それは嬉しそうに寄ってきた。
「一人前になる方法を教えてあげよう」
私は『愚か者が見た夢』の二ページ目、そこには著者が初めて書いたという話の簡単なあらすじが書いてある。魔法使いが人助けをしながら旅をする話だ。
「これを読めばわかる。主人には秘密だよ」
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