0人が本棚に入れています
本棚に追加
主人は美しいものを愛でる趣味がある。
だから、世界一美しい長命のホムンクルスを作り、自分も癒されて人々を夢中にさせようと考えた。
「主人、これじゃダメなのかい?」
私は尻尾で7746番を指す。主人は「ダメよ」と即答した。
「愛嬌ある顔だけど、美しくはないわ」
そう言ったあと「あの子のことを美しいというのよ」と胎児のへその緒組9546番を指差す。彼女は手のひらサイズの人形らしい外見を持ったホムンクルスで、まつ毛がらくだのように長く憂いに満ちた表情で俯いていた。
「でも、7746は素体としては優秀よ。長持ちしてる」
この人形部屋を作るとき、主人は小さい頃、人形が欲しかったと私に話した。ただの人形じゃない、美しく自分の持っているものを全て持った人形を。
その人形と永遠を生きて永遠の旅をすることをずっと夢見ていた、と。
ホムンクルスは魔法を使える。ただ、魔法を使うと寿命が縮む。
考えることより前に魔法を覚えたホムンクルスは文字通り馬鹿の一つ覚えで、消滅するために魔法を使い尽くしてしまう。
だから、魔法使いたちは条件付けをしてホムンクルスたちに魔法を覚えさせる。7746の場合は飴玉だった。
主人の覚えている魔法は莫大だ。ひとまず、その全てをそれに叩き込んでみようとした。
蜥蜴の尻尾組7746番の役目は主人が発見したレシピでどれだけ魔法が覚えられてどれだけ寿命が持つかを調べることだ。
そこからまた研究を繰り返し、最終的には主人の理想の人形を作り出すための試金石にしか過ぎなかった。
主人の考えでは7746は半年で消滅すると思っていた。
「ねぇ、君は何であの人の言うことを聞いているの?」
「主人は優秀だからね」
「ユウシュウ?」
「一人前ってことだよ」
7746は半年どころか一年も持っている。
しかも、主人の魔法を全て覚えて言葉も随分と流暢に話せるようになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!