3年間

3/5
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 北1条通りという幹線道路は、その両脇に高雅なマンションやオフィスビルが隙間なく建ち並んでいる。週末の夜も仕事に奔走する人たちが、ビルの各階を白く浮かび上がらせていた。オフィスビル街の所々には仕事後にふらっと立ち寄れる居酒屋があり、暖かそうな店内の光からは過労を慰めるような肴の匂いが流れていた。わたしはその一直線をゆっくり走るために、できるだけ優しくアクセルを踏んだ。  二日酔い明けに一度訪れたことのある弁当屋が過ぎ、いつも利用していたコンビニが過ぎた。それらの光が夜の中で細長く伸びて横目に写り、涙に混ざって流れ落ちる。  もう乗り越えたかもしれないと勝手に期待していたが、まだ涙は枯れていなかった。仕事を詰め込んでも、バレーボールをしても、何をしても気持ちがなかなか切り替わらなかった。  それで、他のことで気持ちをはぐらかせないのなら、とことん痛みに浸ってみようと決意した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!