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頬も拭う手先も涙で濡れて冷え、目元だけが腫れて火照っていた。先の方まで一直線に並んで見えるたくさんの青信号が、次々に黄色くなり、赤くなる。服の裾で手先を拭うとハンドルを握り直し、ブレーキを踏み込む足に意識を集中した。直とわたしの10年先を想う。その未来のために、泣きすぎてズキズキと痛むこめかみを両手で抑えて、ぎゅっと目を閉じた。
瞼の裏に、全てわかっているとでも言うような直の柔らかな笑顔が浮かんだ。
バレーボールの後は思い出を浴びて、ひどい痛みとともに直を心の隅々から洗い流すことにした。荒療治だが、これ以上の方法を思いつかなかった。
後何度この北1条通りに寄り道をするのかはわからないけれど、できる努力はするつもりでいる。
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