心を流す

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 わたしのオーダーは、明るく元気に潔く、だった。幼馴染は、学級目標みたいだと笑いながらも、快くそのセンスを発揮してくれた。素人にも感じ取れる程、鍛え抜かれた技術が光っている。  長い髪をばっさり切って欲しいとお願いしたわたしに、幼馴染はヘアドネーションという髪の毛の寄付を勧めた。それは協賛サロンで集められた毛束を使って医療用ウィッグを作り、それを必要とする18歳以下の人に何度でも無償で届けられるそうだ。切り取る長さが31センチ以上あれば寄付が可能であり、せっかくここまで大切に伸ばしてきたんだから床に落とすのは勿体ないと言ってくれた。  少しずつ輪ゴムでまとめられた7本の長い毛束が、目の前の台に並べられた。 「カットしたこの髪は、僕がお預かりして、NPO法人宛に責任を持って郵送します」 「うん。お願いします」  幼馴染はその毛束を大切そうにそっと集めて両手で持ち、サロンの角にある扉の向こうに行ってしまった。待つほどの時間もなくすぐにそこから出てきた幼馴染は、またわたしの後ろ側に戻ってくると、くるくると跳ねる毛束に優しく手櫛を通した。 「髪質が軟らかいからパーマは強めにかけておいたよ。色も時間が経てばもう少し明るくなるからね」
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