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髪に対しても一生懸命を尽くしてくれる幼馴染に、懐かしさを伴う罪悪感が喉のあたりで行き来していた。
「あの……ごめんね」
刹那の夢で流した涙のついでに、思い出したことがある。
「どうしたの?」
「あの時、きらいって言って傷つけたままだったこと」
わたしは幼馴染の心を傷つけたままだった。
小学二年生の頃、けいどろという鬼ごっこが流行っていた。あるとき、泥棒で逃げていたわたしの服を、警察の幼馴染がひっぱって、その拍子に水色のリボンが取れた。それは誕生日に買ってもらった、お気に入りの服だった。
「今さらいいよ、それは俺が悪いんだし。俺ほんと泣き虫だったよね。てか、そんな昔のことなんてもう覚えてないよ」
「覚えてるじゃん」
「好きだったことはね」
幼馴染は鏡越しににっこり笑うと、赤くした頬を隠すように顔を背けて、ケープを取った。おおよそ勘違いではなく、わたしはかつての幼馴染であり、あの優しい指の持ち主である彼に、新たな恋のきっかけを投げかけられている。
これを受け取って新しい縁とするか、また無視して傷心の余韻に浸るのか。決めるのは鏡に映った、久しぶりに笑うわたしだ。
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