ひとつまえの恋

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 翌日は二人とも予想通りの体調不良に見舞われた。ベッド脇に置いたミネラルウォーターを少しずつ飲んでは寝て、アルコールを代謝するために半日を見送った。その日は夜になって、ようやく食欲が湧いてきた。直も同じように回復していたので、ずっと気になっていた近所の弁当屋に行くことにした。そこは年配の夫婦が営む店でこじんまりとした温かい場所だった。流行りを取り入れたチェーン店とは違い、ずっと変わらないメニューだと言われた幕の内弁当を選んで、一つ買った。二日酔い明けには、一人前を半分にした量が丁度いい。切り干し大根、ひじきの五目煮、ザンギ、エビフライ、つきこんにゃくの子和え、だし巻き卵。あの夫婦が作ったお弁当を頬張り、一日ぶりの食事の美味しさを直と分かち合った。  この幕の内弁当を、昨日のクリスマスディナーよりも贅沢に思えることが、わたしにとっての全てだった。 
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