3年間

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 最初に出会ったとき、直はバレーボールが6つも入った大きなケースを斜めに背負い、スポーツタイプのバイクに前傾姿勢で跨っていた。さらに派手なフルフェイスのヘルメットを被って人相がわからない状態だった。バイクも全身も原色の緑色で、まるで戦隊もののレンジャーだった。わたしは入るか否か、練習場所である体育館の玄関前に突っ立っていたところだったので、バイクの轟音とともに突然現れた緑レンジャーを目の当たりにして動けなくなってしまった。どう対応するべきか咄嗟に判断出来ずに、まじまじと見入った。 「グリーンズです!」  直は目元の黒いカバーをずらして、柔らかな目元を覗かせた。そうして名前ではなくチーム名を名乗り、にっこり会釈をしてくれた。なんだか可笑しくなってわたしは一気に力が抜けた。久しぶりに心の底から笑い声が出た。また学生の頃のようにバレーボールで汗を流したくて一念発起し、パソコンの検索エンジンに「札幌 バレーボール クラブチーム」と入力して検索をかけ、一番上に出てきたのがグリーンズだった。初参加したその日わたしは、どこか危なかしく滑稽で、真摯なその姿を一目で愛おしく思った。  直は一生転勤族だからと車を保有せず、趣味としてバイクに乗っていた。だから最初は練習のある日に直とボールを乗せて、体育館までの距離を車で送り迎えするようになった。そのうちに当たり前の流れで自然とデートをするようになり、プライベートの時間も一緒に過ごすようになった。  そうやって北1条通りは、わたしのなかにいつもの道として定着していった。  
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