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わたしの世界は、わたしの膚を逸脱することがない
そんなわたしの世界の皮膜を、あなたはとても繊細に壊してくれた。この惨めで閉じられた世界を、あなたの言葉が、あなたの表情が
あなたはどう思うだろう
浅黒くて優しいその手の薬指に誓いを立てるあなたは、もしもわたしが手を伸ばすことができたのなら、やっぱりわたしを拒むだろうか
伴侶も愛子もいるあなたと、真っ白なこのリネンの上でまぐわうことを夢想するわたしを、あなたは厭悪するだろうか
それを恋と看做さないわたしを、高慢だと憤るだろうか
けれどわたしは、そんな安っぽいものでこのつながりを縛り付けたくはなかった
たとえ、あなたにとってわたしが手を差し伸べるだけの弱者でしかないとしても
言の葉を取り上げられたわたしの本性がこんな独りよがりな人間だと知ったら……それでも、あなたは、笑顔で接してくれるだろう
わたしのこの体が不動の限りは
そんな風に考えるとき、わたしは、わたしの体が一ミリたりとも動かないことに安堵する
あなたとわたしを繋ぎ留め、「こんなわたし」が、わたしからあなたを奪い去ってしまわぬように骨肉の髄に幽閉してくれていることに
それくらいの口実、この身体に求めたってバチは当たらないでしょう?
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