アンサンブル・カクテル

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気だるい朝にどたばたと出社の準備を済ませて部屋を飛び出す。 さして楽しくもない職場で作り笑いと愛想笑いを振り撒くだけの時間が始まる。 眠る前に覗いた動画で、楽しくもない職業はやめてしまえと言った旨が語られていた。 パソコンをそうさする指が重い。 昨日きた金遣いの荒い客に飲まされたシャンパンや焼酎のせいだった。 精神的な面のほかに仕事まで影響が出始めては、稼ぐどころではなかった。 バカンスがほしかった。 同僚とくだらない話をしても引きずっている感情はが重苦しい。 有休でも取って遊びに出掛けてしまおうか。 結の気持ちは仕事から離れていく。 昼御飯を食べて、午後の仕事を終わらせて、飲み会を断って、スナック「月」へと向かおうとしていた。 横断歩道を渡ろうとしたとき腕を掴まれた。 驚いて振り替えるとカナタがいた。 「な、なんですか」 咄嗟に言葉が出てこなかった。力任せに引っ張られて、車に引きずり込まれた。 運転席に常連客が苦笑いを浮かべていた。 「おろしてください」 恐怖の方が先走った。後部席のカナタが結の腕を離さない。 「暴れないで」 「よくわからないことしないでください。降ります!」 「説明しても聞いてくれないだろ?」
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