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母は喫茶店やティールームが好きで、時間があると幼い私を連れてフラリと入るのでした。経理の仕事で幾つか得意先を持ち収入がありましたし、1か所に務めていたのではなく仕事先がいくつかあったので合間に喫茶店に入る機会が多かったのでしょう。専業主婦が主流だった時代に、働いていた母は「無駄遣いしたらもったいない」みたいな感覚はあまり無かったと思います。
お酒は飲めず、夜出かけることはありませんでしたが、一人っ子の私を高価な子供服で飾りたて(反動なのか、今の私はシマムラが好き)、母自身も流行の髪形やオシャレを楽しみ、喫茶店でもレストランでも自由に入っていたと思います。
私たち母娘には、その時その時、行きつけの喫茶店がありました。
私にとって一番幼い記憶の喫茶店は、大泉学園か上石神井に在ったケーキ屋さんです。
1970年代初め頃。喫茶店は名曲喫茶のような重厚な薄暗い店と、ロマンチックな明るいティールームとが流行っていましたが、そこのお店は後者で、大きなガラス窓のあるの店内は白とグリーンを基調にしたインテリア。
甘い物より果物の好きな私は「レモンサワー」というケーキをよく食べました。キメの細かい薄いスポンジの上に甘酸っぱいレモンムース、表面は薄い黄色の透明ゼリーでコーティングされ黄色いレモンのスライスが透けて見える目にも爽やかなケーキでした。白と黄色の鮮やかさ、ムースの甘酸っぱい味が、あの店のインテリアにぴったりで忘れられないお菓子です。
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