10人が本棚に入れています
本棚に追加
小学校5年生になると両親は別居を解消して世田谷区に引っ越しました。初めは小田急線と中央線を乗り継いで電車通学していましたが、そのうち世田谷通りと環状七号線をバスで乗り継いで通学するようになりました。すると、母と入る喫茶店も駅の近くだけではなくなりました。
1970年代後半、町でチェーンの喫茶店を見かけるようになりましたが「コロラド」と「ポエム」は中でも多かったと思います。どちらもコーヒー専門店で、コロラドは店内が薄暗くクラシックな茶色いイメージ、ポエムはロゴが黄色くモダンな感じでしたが、どちらも70年代初めまでの明るいティールームと趣が違います。
母校から、地下鉄の新高円寺方面に歩くと、青梅街道と環七の交差する近くに「コロラド」がありました。母が学校に迎えに来ると、帰りに寄ります。中は広くて、薄暗く、テーブル席のほかに長いカウンターもあって、沢山並んだサイフォンの向こう側でマスターが立ち働いている喫茶店です。私はもう小学校高学年になっていたのでおやつもケーキでは足りませんでした。それに「コロラド」はコーヒー専門店なのでお菓子よりサンドイッチやトーストのメニューの方が充実していたのです。私は「パリジャン」を気に入って頼んでいました。7センチくらいの厚切りの食パンにホワイトソースをたっぷり乗せて、アルミホイルでぐるりと囲んで焦げ目がつくまで焼いたものです。母がそれをまねて、カニのマカロニグラタンを作った翌日、ソースの残りで「パリジャン」を作ってくれることがあり、あれは嬉しかった。私も息子にたまに作りましたが、訊いてみると、やはり息子にとっても「グラタンの翌日のグラタントースト」は特別な御馳走オヤツだったそうです。(完)
最初のコメントを投稿しよう!