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しかし、暑いなー。
オレは小さな滝の水を飲んだ。
「ママー、あの人、噴水の水飲んでるよぉー」
今度はまた別のガキに言われたが、そのガキは親らしき人間に手を引かれて去って行った。
ここは一体何なんだ?
思考能力が空腹のせいで低下した。
何か喰うものは無いか
オレは辺りを見回して獲物を発見した。
木の下にいる鳥にロックオンし息を潜める
そーっと、そーっと、近付き、一瞬で捕らえる。
「マ、ママ。あの人」
あ?また何か文句でもあるのか?
オレはガキの声のする方に視線を向けた。
さっきまでのガキと全く違う表情とたくさんの視線
を感じた。
それはオレが昔から浴びてきた視線に似てる。
恐怖と不安な表情たちの人間。
オレが何かしたか?
ガキがその思いに答える。
「あの人、お耳と尻尾が出てきたよ」
え?
オレは慌てて頭とケツに触れてみた。
さっきまで無かったのに。
何でだ。
「あんなの仮装だよ」ふいに誰かの一言で、みんなの視線がさっきまでと違い、『なーんだ』とほっとした表情になり、温かい視線に変わった。
オレは……。
オレは……。この匂い知ってる。
ずっとずっと探してた。
逢いたかった……。
さっき見失った匂い……。
「せ、セルリアン」
立ち上がった瞬間に、鳥が羽ばたいて行き、鳥の羽が顔にかかる。
鳥の羽の向こう側で、こっちを見て立っていた女こそ。
オレが逢いたかったセルリアン……。
身長も大きくなり、顔立ちもずいぶん大人っぽくなったが、間違いない、セルリアンだ。
セルリアンは、オレの側に近付き強引に腕を引っ張り、人の輪から抜け出させてくれた。
「いて、セルリアン」
「……、ちょっとぐらい我慢しな」
え?
聞き間違いか?
セルリアンがそんな風に話す訳がない。しかし、これ以上話すことを無言の圧力で止められた。
オレはなすがままに、人通りの少ないとこに連れて行かれた。
「セルリアン?」
セルリアンは、オレの姿を上から下までじっと見てから吐き出すように言った。
「今はセルリアンじゃない。蔵田真綾」
「くらたまあや?」
「だいたい今更なんなんだよ。来るのがおせーんだよ」
これがずっと探していた、セルリアン本人なのか?
オレの知っているセルリアンはこんな女じゃ無かった……。
「まぁ、いい。やっと会えたんだ。これからは全て私の言う通りに動いてもらうよ」
不適な笑い。
オレの知ってるセルリアンはこんな女じゃ無かった?
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