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オレの知っているセルリアンは、小さくて素直で、少し舌ったらずで、笑うととても可愛い少女だった。
いつも、オレのことを心配して、オレが帰って来るのをずっと待っているような健気な少女だった。
それが、今オレの目の前にいる女は一体何だ?
薄紫色のふくらはぎまでの長い髪の毛、大きな藍色の瞳、以前と変わらないのはそれだけだ。
今はもう少女と呼べるような大きさではないし、何だか格好もおかしい。
セルリアンは、あんなに足を見せる服装なんてしたことない。
「久しぶりだな、ラビル」
セルリアンらしき女はオレに近付き頬に触れた。
「私がお前にどれだけ逢いたがったか分かるか?」
そして、オレに抱きついてきた。
「ああ。ラビルの匂いだ。逢いたかった……」
オレは突然の抱擁にどうしていいか分からず、されるがままになっていた。
「これからは死ぬまでお前を離さないぞ」
セルリアンはオレにとって、とても大切な人だったが、こんな風な関係じゃなかったし、何せまだ少女としか思って無かったし。
「そうだな、まずその格好では目立つから洋服でも買いに行くか? ……、ん? 耳と尻尾が消えてるぞ」
言われて気が付いた。
耳と尻尾が消えてる。
どのタイミングで出て、どのタイミングで消えたのか全く分からない。
「ああ、靴も必要だな。……、でも、お前に今一番なのは……。ここの店だな」
通りに出て、ぶつぶつ言いながら、セルリアンは、動物の匂いがたくさんする建物の中に入った。
ここは、何だ?
たくさんの動物がガラスケースに入れられ、オレを見てワンワン吠えてる。
ちょっと、うるさいな。
オレは、低いうなり声を出して威嚇した。
途端に、尻尾を丸めて黙ってしまう動物たち。
ふん、このオレに勝てる訳なかろう。
あれ? セルリアンは?
見失ってしまったセルリアンを探すと、セルリアンは何やら白い袋を持ってオレの前に現れた。
「もう2度と私から離れないように、お前にはこれが必要だろう?」
そう言って袋から出したものは、丸いワッカの物だった。
「それは何だ?」
「これか……。私の家に帰ったら教えてやる。首につけるアクセサリーのようなものだ」
アクセサリー?
まだ分からない言葉が出てきたが、セルリアンがこんな笑顔でくれるものなんだから、いいものに違いない。
と、……勝手に納得していた。
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