八百万会

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 八百万会は古く日本に伝わる団体だ。  その呼び名はヤオヨロズカイではなく、ヤドウバンエという。  古来より日本は物の怪と称される超現象や、神と呼ばれる多種多様の生物が人に並んで跋扈するおおらかな土地であった。  しかしその多様性文化は日ごと年ごと衰退し、長い年月の中で廃れる。人間はこの島を我が物とし、それ以外の存在を人にあらざるものとして虐げはじめたのである。  虐げられた多くの物の怪と神々を守るべく誰が言い出したか設立されたがこの八百万会。  今やヤオヨロズの"人にあらざるモノ"の集う世界最大かつ最古の〈人〉権団体となっている。  つまり八百万会は、室町時代を起源とする超自然からなる森羅万象と魑魅魍魎を統括する組織である。  その頂点に君臨する現会長というのがわたしの使える川崎という男だ。  この男、果たして人間かどうかもわからないのだが外見上はいたって普通の、太っても痩せてもいなければことさら背の高い低いわけでもない中年オヤジであるからして、おそらくは人のようなものであろうと皆認識している。    真実のなんたるかは実のところ、皆の関心ごとであると同時に、知るに恐ろしく誰も触れずにいるのだった。  さて自己紹介が遅れて申し訳ない。  私の名は前原である。  平たく言ってこの謎多き男川崎の直属の部下のようなものだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!