伝える

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奈緒さんが朝礼台から降り、鉄棒の方に向かって歩いて行った。 自分も、その後について歩いて行く。 「この間、大好きだった五十嵐先輩に久しぶりに会ったでしょ?あれから何日も経って、その間、いろいろ思って、考えて…。でもね、わたし…その時気付いたことがあるの。」 「気付いたこと?」 「五十嵐先輩のこと、あんなに大好きだった筈なのに、浮かんでくるのは、晶ちゃんの顔ばかりだった…。」 「……。」 低めの鉄棒に寄りかかりながら、奈緒さんが優しい表情で言った。 「晶ちゃんはどう?」 「自分…。自分は…。」 一番高い鉄棒にぶら下がり、目を閉じる。 そして、ここ数ヶ月のことを思い返してみた。 “あぁ…そうか。 そうなんだ…。 自分の気持ちの中は、もうこんなにも、奈緒さんでいっぱいになってたんだ。 バカだな、分かってた筈なのに…。”
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