509人が本棚に入れています
本棚に追加
しかしながら、山野は女王様なだけあって、まあまあに仕事を抱えていた。
確か、早めに提出しなければならない書類もあったはずだ。
「大丈夫です。私の今の仕事は全て田部君に回しますから。」
恐ろしいほどの完璧な笑みでこちらを見る山野に、隆之介は固まった。
理不尽です。理不尽すぎます。隆之介は声には出さなかったが強く思った。
前髪と黒縁眼鏡で隠れた目で山野をジッと睨んだ。
「んー。それはあまり関心出来ない発言ですね。」
杉田とは違う、それでも聞き心地のよい低音の優しい声が突然発せられた。
予想もしていなかった方向からの声に皆が振り返った。
「おはようございます。」
隆之介は時間が止まったような錯覚に陥った。
いや、隆之介だけではないだろう。美意識高い隊もボーッとしている。
そこには、これが所謂"王子様"なのだろう。
すらりと伸びた手足。身長も180㎝はあるであろう。
色素の薄いサラサラの髪。小さい顔にハッキリとした二重の優しい眼
まさに、キラキラ王子様が、王子様の代名詞が立っていたのだ。
「あぁ、おはようございます。社長。もう来ちゃいましたか。」
杉田だけはそこに王子様が居ることが当たり前のように、いつも通りの対応だった。
最初のコメントを投稿しよう!